子どもの急病:受診前に家庭でできる初期ケアと病院へ行くべきか判断する目安
はじめに:子どもの急病時、親ができること
子育て中のご家庭では、お子様の急な体調不良に遭遇することは少なくありません。特に共働きで忙しい親御さんにとって、急な発熱や嘔吐などに見舞われた際に「どのように対応すべきか」「すぐに病院に行くべきか、様子を見ても良いのか」といった判断は大きな不安を伴うものです。
この状況において、親御さんが落ち着いて適切な判断を下せるよう、本記事では家庭でできる初期ケアの方法と、医療機関を受診すべきかどうかの具体的な目安について解説いたします。お子様の症状を冷静に観察し、適切な行動をとるための情報としてご活用ください。
家庭での初期ケア:症状に応じた対応
お子様が急に体調を崩した際、まずは落ち着いて症状を観察し、状況に応じた初期ケアを行うことが重要です。
発熱時の初期ケア
発熱は体がウイルスや細菌と戦っている証拠です。熱の高さだけで緊急性を判断するのではなく、お子様の様子を総合的に見ることが大切です。
- 安静と十分な休息: 熱があるときは、無理に活動させず、ゆっくりと休ませてください。
- 水分補給の徹底: 発熱時には汗をかきやすく、脱水状態になりやすいです。水、麦茶、経口補水液、イオン飲料など、お子様が飲みやすいものでこまめに水分を与えてください。
- 体を冷やす工夫: 熱が高く、お子様が不快そうにしている場合は、首の付け根、脇の下、足の付け根など、太い血管が通っている場所を冷やタオルや冷却シートで冷やすことが効果的です。ただし、嫌がる場合は無理に行わないでください。
- 服装の調整: 暑がり、寒がりの様子に合わせて、衣類を調整し、快適な状態を保つようにしてください。
嘔吐・下痢時の初期ケア
嘔吐や下痢は体から有害なものを排出しようとする防御反応ですが、脱水症状に注意が必要です。
- 脱水症状への注意と水分補給: 嘔吐がある場合は、吐き気がおさまってから、少量の水分(スプーン1杯程度)を頻繁に与えるようにしてください。経口補水液が推奨されます。下痢の場合も同様にこまめな水分補給が重要です。
- 消化の良い食事: 食事がとれるようであれば、おかゆ、うどん、すりおろしリンゴなど、消化の良いものを少量から与えてください。乳製品や脂っこいものは避けましょう。
- 二次感染予防: 嘔吐物や排泄物の処理は適切に行い、手洗いを徹底して家庭内での二次感染を防ぐことが大切です。
軽度の外傷(すり傷・切り傷など)時の初期ケア
転倒などによる軽いすり傷や切り傷の場合、家庭で対応できることがあります。
- 止血と洗浄: 出血がある場合は清潔なガーゼや布で直接圧迫し止血します。その後、水道水で傷口をきれいに洗い流してください。
- 患部の保護: 洗浄後、消毒は必須ではありません。清潔な絆創膏やガーゼで傷口を保護してください。
病院受診を判断する目安:緊急度を見極めるポイント
お子様の症状を見極め、医療機関を受診すべきか、もう少し様子を見ても良いかを判断する際の具体的な目安をご紹介します。
すぐに医療機関を受診すべき危険なサイン
以下の症状が見られる場合は、緊急性が高く、速やかに医療機関を受診するか、救急車を呼ぶことを検討してください。
- 意識の状態がおかしい: 呼びかけへの反応が鈍い、ぐったりして眠り続ける、けいれんが止まらないなど。
- 呼吸の状態が異常: 呼吸が非常に速い、息苦しそう、肩で息をしている、唇が紫色に変色しているなど。
- 顔色・体温: 顔色が明らかに悪い(土気色、青白い)、体が非常に冷たい、または非常に熱いが高熱が続きぐったりしている。
- けいれん: 初めてのけいれん、けいれんが5分以上続く、意識が戻らない場合など。
- 嘔吐・下痢の頻度と量: 嘔吐を何度も繰り返す、水分を全く摂れない、下痢の回数が非常に多く脱水症状が疑われる。
- 脱水症状の有無: 泣いても涙が出ない、おしっこが出ない、口の中や舌が乾燥している、皮膚のハリがないなど。
- その他の緊急性の高い症状: 強い頭痛や腹痛を訴える、頭を強く打った、誤飲の可能性がある、高いところから落ちたなど。
夜間・休日でも受診を検討した方が良いサイン
上記の緊急サインほどではないものの、気になる症状が続く場合は、夜間や休日でも診療可能な医療機関への受診を検討することをお勧めします。
- 発熱とともに、ぐったりしている、機嫌が非常に悪い。
- 水分は摂れているが、嘔吐や下痢が頻繁に続く。
- 発疹が出ているが、全身に広がりやすい、かゆみが強い。
- 痛みを訴え続けている。
翌日まで様子を見ても良いと考えられるサイン
お子様が比較的元気で、以下の症状であれば、翌日まで様子を見ても良い場合があります。ただし、症状が悪化するようであれば、速やかに医療機関を受診してください。
- 熱はあるが、機嫌が良く、水分が摂れている。
- 軽い咳や鼻水があるが、食欲があり、活気もある。
- 下痢があるが、回数が少なく、水分が摂れており、他に気になる症状がない。
- 軽度のすり傷で、止血できており、化膿の兆候がない。
受診前に準備しておきたいこと
医療機関を受診する際は、以下の情報をまとめておくと診察がスムーズに進みます。
- 症状の経過: いつから、どのような症状が出ているか、時間ごとの変化。
- 体温や排泄の記録: 熱の推移、嘔吐や下痢の回数と量など。
- 自宅でのケア: どのような対処をしたか、その効果はどうか。
- 既往歴、アレルギー、内服中の薬: 特にお薬手帳があれば持参しましょう。
- 保険証、乳幼児医療証、母子手帳: これらは忘れずに持参してください。
まとめ:不安な時は相談を
子どもの体調は急変することがあります。判断に迷ったり、少しでも不安を感じたりした場合は、一人で抱え込まず、地域の小児救急電話相談(#8000)や、かかりつけ医、地域の医療機関に相談してください。早期の対応が、お子様の回復を助けることにつながります。本記事が、親御さんの不安軽減と、適切な判断の一助となれば幸いです。